元大学教員が2022年に院試を受験すべきだと考えるワケ【大学院入試の内部事情を解説】

 大学院入試もこれから本格的に始まる。

 今回の記事では、元大学客員講師(関東学院大学大学院)が2022年に大学院入試を受験した方がいいと思う理由について、院試の内部事情を伝えつつ、解説します。

今年は留学生が居ない分、国内の受験生の入学を強化している学校が多い

 今年は政府の外国人受け入れ停止措置が理由で、国費留学生を除く留学生の受験生が大幅に減ると予想される。大学院の中には、日本に来れない留学生にオンライン入試を認めている学校もある(立命館大大学院など)が、海外では「日本の防疫措置は鎖国のようだ」とバッシングをされている状態(「Nキャス」2022/01/15放送分より)で、日本ではなく他国に留学を考える人も増えている。しかも、海外は9月入学が一般的なので、留学生にとってはそもそも日本よりも他国に留学した方が都合が良い。

 日本の高等教育において、実は留学生の影響力は大きい。筆者は関東学院で客員講師として日本文化の授業を受け持っていたが、日本の文化を知りたいと志す外国人は意外と多かった。筆者は留学生に日本を選んだ理由を聞いてみたが、『薄桜鬼』や『刀剣乱舞』などの日本のアニメーションの影響も大きいそうだ(因みに、90年代のジブリ作品や攻殻など古いアニメに影響を受けたという留学生は筆者が担当したクラスには居なかった)。ネットに外国語の字幕付きのアニメがアップロードされており、それを観て日本文化に興味を持ったという留学生もいた。そのように、コロナ前は留学生が多かったので、英語の資格を取得しないと大学院で教鞭を取るのは難しいとされる程だった。

 だが、現在は留学生の受け入れが未定となっている状態(今月15日に、国費留学生で卒業までに1年の人は2月から100人程度受け入れる方針を決めた)なので、留学生に依存していた各大学の留学生の穴は計り知れないものになっている。

 その留学生の穴を埋めるため、国内の各大学は国内の受験生の入学を強化しようとしている状況だ(実際、昨年12月に筆者の先輩准教授もそのように仰っている)。勿論、東大や早慶のような超人気校だと留学生に関係なく倍率が極めて高い水準を保つと思うが、留学生に依存している大学や大学院は国内で穴埋めしなければならない為、入りやすくなる傾向がある。

社会福祉関係の大学・大学院の入試問題は、はっきり言って超簡単!競争率も低いので大学院希望者はオススメ

 留学生の影響を最も受けると思われるのは、社会福祉関係の大学や大学院だと筆者は思う。

 その理由は、筆者は老人ホームの経営コンサルタントを行っているが、福祉の仕事は日本とEPA(経済連携協定)を締結中のベトナム人労働者が多く、社会福祉関係の大学はアジア系の留学生が多いからだ。過去には日本の福祉事業が外国人に依存している事をよく表した事件として、2019年には、東京福祉大学で1600人もの留学生が行方不明になった事件もあった。

 筆者は7年前に東洋大学大学院の社会福祉学研究科に合格したが、社会福祉関係の入試ははっきり言って「これ出来ないと逆にヤバいよな」と思ってしまう程簡単だと思う。小論文である専門科目は、『社会福祉学』(有斐閣)というテキストを分野毎に暗記していればテキストに書いてある内容をそのまま書けば解ける問題だったし、東洋大の英語は長文がやや長く単語の意味が分からない文も一部あったが、問題はパラグラフごとに理解できているか問われている問題なので一文ぐらい分からない文があっても解けてしまったし、長文の内容もセンター試験(現在の共通テスト)の長文が理解できる程度の英語力があれば解けてしまうレベルだった。

 しかも、社会福祉関係の大学院は進学希望者が少ないので、競争率が高くない。その理由は、社会福祉関係の大学は卒業後に就職する人が殆どだからだ。なので競争率も高くなく、日東駒専レベルの大学院で『社会福祉学』というテキストの内容を暗記できる程度の学力があれば、まず落ちる事は無いだろう。

 今から出願が間に合うかは存じないが、どうしても4月から大学院に行きたい人は社会福祉関係の大学院を受験する事を強くお勧めしたい。社会福祉関係の学校の入試は、哲学部や社会学部の入試のような難問奇問は一切出題されない。また、社会福祉関係なら卒業後も就職が多く(給料は他の職種と比べて低いが)、大学院まで出れば介護ビジネスの経営者になれる可能性もあるからだ。介護職は現場労働だが、介護ビジネスの経営者になれば基本的にデスクワークだ。

元大学教員が院試の内部事情を解説:コロナ対策が厳しくなると難問奇問が出にくくなる傾向がある

 大学・大学院の個別の入試問題は、大学の常勤の教授や准教授などが作成している。入試は、ボーダーラインを越えた人が全員合格できる資格試験とは異なり、「落とす為の試験」という性格がある為、例年だと「教育課程を逸脱しない範囲で」難問奇問を作る作業が12月~1月の間に行われる。

 ところが、今年はオミクロン株対策で感染者や濃厚接触者となった受験生は別室受験や代替措置(追試)を取る大学・大学院も多い。追試と言っても、ある程度は本試験と同レベルの難易度で、かと言って教育課程を逸脱した難問は出題できないので、過去問から手探りで出題するしかない。また、常勤の大学教員は自分の研究(常勤の教員は定期的に学会に研究成果を報告しなければならない)や大学生の定期試験作成、院生の研究指導などの仕事も多々ある為、追試を行う場合限られた時間の中で作問しなければならなくなる。教員としてはコロナ対応・教育課程厳守・定期試験作成・院生指導・研究、こういった多数の縛りがある状態で入試問題の作問という状態に陥る。

 そうした縛りが多数ある状態でいざ作問作業に教員たちが取り掛かるとなると、教員視点では難問奇問を作りにくい雰囲気になる。入試の採点は作問した教員など複数で行うが、仮に奇問を出題してしまい正答が複数出た場合、全員正解にしなければならないので、そうなると作問者の責任問題になってしまう。なので、政府の要請でコロナ対策が厳しくなると、難問奇問が出題されにくい傾向になりやすいと筆者は思う。

院試の場合、厳格なボーダーラインが設定されていない

 ボーダーラインを巡り、大学入試と院試で大きく異なるポイントがある。

 合否を判定するボーダーラインだけを考慮する大学入試と異なり、院試は「その受験生の状態を見る」という性格を持っている。厳密に言うと院試は合否を決める筆記試験のボーダーが一応あるのだが、筆記試験でボーダーラインを下回っていても即不合格とはならず、筆記の後に行われる面接試験で教員にやる気を見せれば受かる場合もある(ただし、法政大学大学院のように筆記試験でボーダーを下回った人はその時点で不合格になり、筆記の後の面接を受けられないという厳しい学校もある)。院試で面接試験が必ずあるのはそういう事だ。

 院試がこうした形態を取っている背景には、院試は受験者数が少ないのも由来している。大学入試は何百人~何千人もの大量の受験生が入試を受けに来るが、院試の場合、例えば筆者が過去に受験した大学院入試はたったの15人いるかどうか位だった。受験者数が多い大学入試では仕事の負担を減らす為ボーダーラインを設定して合否判定した方が効率的であるが、受験者数が少ない院試では受験者一人ひとりの状態を見る機会を設ける事ができる為、筆記試験と面接試験の両方を設定する大学院が多い。そもそも、大学院は少数精鋭かつ研究がメインの場所なので、教員は面接で受験者の人物像や研究したい内容を直接知りたいという興味を持っている。

 院試はそうした意味で、ボーダーを下回ったら容赦なく不合格になる大学入試とは大きく性格が異なっている。

【参考記事】【入試の面接】これを面接で言うと落ちます。口癖の人は要注意!【元大学教員が面接のタブーを解説】(2022/01/09掲載)

結局、どうして2022年に院試を受けるべきなのか?

 筆者が今年に院試を受験すべきだと思う理由は、オミクロン株による留学生激減で難問奇問が出にくい傾向があり、しかも院試の場合筆記でダメでも面接で敗者復活できる可能性がある為、今年の院試は普通に勉強していれば受かりやすい状況だからだ。

 特に、例年いる中国人留学生(意識の高い中国人)は勉強の質が日本人と根本的にレベルが違うので、中国人と競争しなければならない受験は大変である。院試は大学入試と比べて全体的な募集人数が少ない為、留学生がほぼ居ない今年は全ての募集が国内の受験生が対象となっていると考えて良い。留学生は仮に日本の学校に合格してもいつ来日できるか分からず、先に述べたように他国での留学を考え始めている人も増加しているからだ。

 筆者の推測になるが、院試は留学生枠が設けられているが、コロナ禍になる前は留学生枠で優秀な学生が埋まってしまい、それ以外の枠の中で日本人が受験しなければならなかった為、コロナ収束後は院試の競争率が高くなると思う。なので、今年に院試を受験できる人はラッキーである。

【参考記事】【元大学教員解説】大学院進学後に後悔する人と成功する人の差(2021/10/24掲載)

(HIROKI)