【オメガ】スピードマスターの歴史【武井・北口の腕時計コラム】

今回のコラムでは、オメガのクロノグラフ「スピードマスター」の歴史について紹介したいと思います。

1957年に誕生したスピードマスター

ref.2915

元々クロノグラフという機構は一般ユーザーのニーズではなく、モータースポーツの計時など計測に関わるプロフェッショナルしか需要が無いものでした。日常生活ではクロノグラフ機構を必要とする場面が少ないからです。今では当たり前であるタキメーターなどは50年代当時はまだプロユース向けのものでしたし、NASAが月面飛行のための時計としてオメガのスピードマスターを採用したのも、クロノグラフを利用しなければならない場面があったからです。

しかし、そうしたプロユースの時計を1957年に一般販売したのが、オメガでした。

オメガのスピードマスターref.2915は1957年に誕生し、約3年間の間製造されました。ブロードアローの針やベゼルに描かれたタキメーターなど、当時としては画期的なデザインの時計でした。

アポロ計画で採用され、普遍的なデザインになったムーンウォッチ

ref.105.012

オメガはその後、東京オリンピックのあった1964年にref.105.003というムーンウォッチの原型となるモデルを発表しました。このモデルに採用された白いペンシル針や黒色の文字盤は現在でも継承されている普遍的なデザインです。

そしてアポロ計画に採用されたのが、ref.105.003を改良したref.105.012です。こちらのモデルはスピードマスターの文字下に「プロフェッショナル」と刻まれ、ケースの大型化と白色の針による視認性向上やリューズガードの採用など、現在でも販売されているスピードマスターの原型となりました。

NASAでは宇宙空間やトラブル発生時の過酷な状況下での使用を想定した試験が時計メーカーに課せられましたが、様々な試験をパスし最後まで残ったのはスピードマスターだったと言われております。

アポロ13号のスピードマスター伝説

1970年に行われたアポロ13号では、酸素タンク爆発により計器が使用不能になり、軌道修正のために14秒間エンジンを噴射する必要が出ましたが、乗組員たちはスピードマスターのクロノグラフ機構を使って正確に14秒を計測し、そのおかげで無事帰還することができました。

13号の乗務員たちを救出した時計としてref.105.012は伝説になりました。現在でもこちらと同じデザインのスピードマスターが生産を続けられており、高い人気を博しています。

ムーンウォッチのムーブメント

Cal.321

宇宙に行ったスピードマスター ムーンウォッチのムーブメントCal.321は手巻き式です。その理由は宇宙で時計を使用する際、自動巻きですと無重力状態でローターが上手く回転しない為です。かつては激しい戦場で使用される機械式軍用時計でも、ローターの回りすぎを防ぐために手巻きが採用されておりました。

現行のムーンウォッチにも当時のデザインを踏襲するため手巻き式が採用されております。

また、Cal.1861からはシースルーバックとなりましてムーンウォッチの手巻きムーブメントを鑑賞することができるようになりました。Cal.1861はコスト削減の為Cal.321と比べますとやや物足りなさは感じますが、それでも裏蓋から見える手巻きムーブメントは緻密に組まれていて美しく、アポロ13号を救った伝説もあり、所有欲を満たす一本です。

現行モデル Ref.311.30.42.30.01.005

以後、現在販売されているムーンウォッチについてご紹介します。

2014年から生産が続けられている現行ムーンウォッチでは、ムーブメントに手巻きのCal.1861が搭載され、ムーンウォッチとほぼ同じデザインとプラスチック風防で当時の雰囲気を出しております。付属品も豪華で、時計をじっくりと観察できる拡大鏡ルーペやムーンウォッチのプレート、特製ブックレットなどスピードマスターファンならたまらない商品です。

ただ、こちらのモデルは秒針停止機能(ハック機能)がない点、姿勢差が大きい、リューズやプッシャーが甘く防水性能が低い、プラスチック風防の為傷が入りやすい点は留意する必要があります。定価を下げている代わりに機能面では他のスピードマスターと比べやや劣る点は購入前に注意が必要です。

定価は約60万円です。

クロノメーター認定を受けたワンランク上のムーンウォッチ

先ほどのモデルよりも定価が倍になってしまいますが、100万円を超えるモデルではマスタークロノメーター認定を受けるなどワンランク上のムーンウォッチを狙うことができます。

Ref.311.92.44.51.01.003ではクロノメーター認定を受けたCal.9300を搭載したモデルが展開されております。こちらは自動巻きで、クロノメーター認定受けるだけあり平均日差±3秒程度と高精度であり、またゼンマイに磁気の影響を受けないシリコンが採用されておりますのでスマートフォンの普及や医療現場といった磁気を発する場面での使用に適したモデルに進化されております。

こちらは定価が132万円と高額になりますが、長く使用するのであればこちらも一考の余地に値するモデルです。

また、2021年にはムーンウォッチのマスタークロノメーター化が行われ、ナイロンベルトが70万4000円、メタルブレスレットが73万7000円となっております。

Cal.321の復刻モデル!Ref.311.30.40.30.01.001

アポロ計画から50周年を記念して宇宙に行った伝説の時計をそのままそっくり再現したモデルがこちらです。

このモデルではサファイアガラスに変更されている以外は当時のモデルをそのまま再現しており、価格は160万円を超えております。やはりシースルーバックから望むCal.321は美しい限りです。

様々なモデルがあるスピードマスターですが、50年間ほぼデザインが統一されている点では普遍的な魅力がある時計だと思います。オメガを代表するモデルで、ムーンウォッチの伝説を腕に着けられる栄光を体感してみてはいかがでしょうか。

記事執筆者:GTコミュニティブログ編集担当 武井
北口裕貴