【原油高騰】原油価格高騰を終わらせるのは「あの国」?【元大学教員の時事解説】

 昨年から続くOPECによる原油の協調減産の影響で、原油価格が高騰を続けている。アメリカのバイデン政権は今月23日に、国内の備蓄放出を決定。これに中国やインド、日本なども乗り、アメリカと協調放出する形になった。

 今回はバイデンが備蓄放出した背景を中心に、原油価格のカギを握るとされるロシアについても言及してみたいと思います。

OPECが増産したがらない理由は「SDGs」が影響している

 近年進んでいるSDGsなどの脱炭素を目指す世界的な取り組みの影響で、OPECは高騰している今を原油を高く売れるラストチャンスと考えている。簡単に言うと、産油量(供給量)は多い反面、需要が今後減っていくのが明らかなので、産油国は売れる時にできるだけ高く売っておきたいという思惑だ。

 同じ中東でもドバイのように「タックスヘイブン」と呼ばれる富裕層への課税を免除することで原油依存から抜け出している国もあるが、特に世界2位の産油国であるサウジアラビアは原油による収益に依存しており、座礁資産である原油は将来的に需要がなくなっていく可能性が高いからだ。

 また、感染が落ち着いている日本とは裏腹に、ヨーロッパでは現在感染が再拡大を続けている。そうなると、ヨーロッパでまたロックダウンなどの措置が取られる可能性があるため、原油需要が小さくなるのではとOPECは危惧している。

バイデンが国内備蓄放出を決断したワケ

 バイデン政権はOPECに増産を求めてきたが、先に述べた理由でOPECは増産を拒否。そのため、バイデンは渋々備蓄を放出することを決めた。

 ただし、この国内備蓄は本来戦争などの有事が発生した時に放出するための最後の砦となるもので、今回のような感染症が理由で放出するのは異例。アメリカが前回放出したのは、2019年にサウジアラビアのプラントで爆発が起きた時以来だ。

 バイデンがそこまでした理由には、国内のインフレがある。アメリカでは現在、原油高騰と金融緩和政策によって物価が上昇中で、国民のフラストレーションが溜まっている。さらに、6月のハリス副大統領の「メキシコ移民はアメリカに来ないで欲しい」という発言や、8月のアフガン撤退における不手際の影響で、バイデンの支持率は今月26日の時点で約38%という超低水準に陥っている。

 そうした政権への逆風を打開するために打ち出したのが、今回の備蓄放出だ。これには、今月のブラックフライデーや、12月のクリスマス商戦を見越した、需要喚起も放出の背景にある。原油価格が下がれば運輸コストが下がるため、物価も下がると予想できるからだ。

 だが、原油価格が備蓄放出だけで収まるかどうかは不透明だ。来年行われる中間選挙への対策という意味合いもあるが、今月に民主党有利の地盤であるバージニア知事選で共和党が金星を挙げており、備蓄放出が支持率回復への足掛かりになるかは難しいと思われる。

バイデン政権がシェールガス増産に踏み切れないワケ

 シェールガスとは、堆積岩から採掘される天然ガスのことだ。2000mも深い場所に存在するため従来は採掘困難とされていたが、2006年に「シェール革命」と呼ばれる画期的な採掘手段が確立され、アメリカは世界4位のシェールガス資源量を誇る国になった。(参照:https://emira-t.jp/keyword/191/

 読者の中には「石油が高騰しているならアメリカがシェールガスを増産すればいいのでは」と思う人もいるかもしれない。だが、バイデン政権がシェールガス増産に踏み切れないのは、脱炭素推進政策を取っているのが最大の理由だ。

 実はシェールガス採掘時に、石油もガスと同時に採掘ができる。故にアメリカはテキサスをはじめ、世界的な産油国にもなっているのだが、バイデン政権がシェールガス採掘を公費投入で進めた場合、それが脱炭素推進政策の矛盾に繋がってしまうというジレンマがあるため、シェールガス増産に踏み切れないのである。

原油価格のカギを握るのは「ロシア」?

2019年の原油生産量上位10か国
(https://www.mofa.go.jp/mofaj/kids/ranking/crude_much.html)

 

 コロナ前の2019年時点でロシアは世界3位の産油国であった。OPECというと中東のイメージが強いが、ロシアはOPECプラスに加盟しており、昨年に引き続き協調減産に乗っている。

 仮にロシアが原油増産に舵を切れば、原油価格高騰が終わるかもしれない。

 ただし、ロシアの原油増産には非常に高いハードルがある。アメリカとロシアは現在最悪の関係で、3月にはバイデンがプーチンを「人殺し」と発言したり、そもそもクリミア併合による欧米からの経済制裁を受けている以上、バイデンが増産を要請してもプーチンが素直に応じる可能性はほぼ無いと言って良い。また、ヨーロッパで感染再拡大が起きており、増産しても原油需要の縮小から価格が下がってしまう可能性もある。

 その背景には、ロシアが原油の売り時を慎重に見極めているという状況もあるそうだ。この思惑は中東諸国と同様で、需要がなくなるまえに高く売っておきたいという思惑があるからだ。ロシアでは現在、政府高官が座礁資産である原油で利益を出せるのはあと20年程度と発言しているほど将来的な原油ビジネスに対して危機感を抱いており、原油増産に慎重になっている状態。

 一方、ロシアは中東のような原油依存国ではない為、原油を増産してくれても良さそうな気もするが、果たしてロシアが重い腰を上げるかどうか・・・

(HIROKI)