民主主義サミットは無意味である理由を解説します【元大学教員の時事解説】

 日本時間9日と10日にオンラインで行われた民主主義サミット。この取り組みは初めてのもので、約110の国々と民主主義の考え方について確認する場となる。来年も開催が計画されているが、色々と欠点も多い。

 今回の記事では民主主義サミット開催の意図とサミットの欠点について解説します。

民主主義サミットの狙いとは

 アメリカはコロナ禍における中国の経済成長を危惧している。その理由は、米のライバルである中国が力を持つと人権侵害問題(新疆ウイグル自治区問題)も悪化し、米軍が2027年(この年は中国人民解放軍創設100年となる節目の年に当たる)までに行うと予測する台湾侵攻の可能性も高くなるからだ。

 今回、民主主義サミットを開いて110もの国々を招待した背景には、人権侵害問題を抱える中国とロシアへの圧力を高める狙いがある。

 民主主義サミットは招待の基準が明確とされていない為、アメリカの戦略的意図が大きいのも事実である。簡単に言うと、アメリカとしては民主主義サミットを「同盟国を呼び集めて、みんなで一丸となって中国とロシアやそれを支持する国々を孤立させようぜ」と一致団結する場にしたいのである。

 その反面、ドゥテルテ大統領のワンマン政治であるフィリピンが招待され、海洋問題で中国と対立するベトナムを招待しないなど、サミットの戦略的意図と矛盾する部分もある。

民主主義サミット開催はアメリカ単独主義の綻びか

 歴史的に見てアメリカという国は、他国に民主化教育を施すことで同盟国を増やしていった国である。過去のアメリカは圧倒的な軍事力を背景に、アメリカに敵対する国を攻撃し、民主化教育を施して連合国の支配下に置いていった。日本もその一国である。

 しかし、近年のアメリカは単独で民主化教育を施すのが困難な程弱体化しつつある。今年はトランプ前大統領が1月に退任した事で、ミャンマーのクーデターやアフガンのタリバン掌握といった政権転覆が浮き彫りになり、トランプが施していた敵対国に対する締め付けが一気に解れた感じである。

 そうした状況において、アメリカ単独で敵対国に圧力をかけるのは難しいと判断したのもサミット開催の背景にある。

北京五輪を巡り岐路に立たされる日本

 招待国のうちの一国がわが国だ。日本は北京オリンピック外交的ボイコットを同盟国から同調圧力をかけられている状態だ。「新しい資本主義」をスローガンに掲げる岸田政権は中国依存の経済脱却を目指すため、外交的ボイコットを実行する可能性もあると思われる。

 日本は民主主義サミット開催に際し、中国への圧力を高める狙いとしてASEAN諸国を招待するよう、アメリカに要請を出していた(NHK岩田解説員の発言より)。ところが実際には、タイ、シンガポール、ベトナムなどが招待されなかった。海洋問題で中国に対抗するベトナムを除外し、中国と友好国のマレーシア(領海侵犯のトラブルがあったが、経済的には友好国。なお北朝鮮とは金正男暗殺事件以降関係が悪化している)を招待したのは、アメリカが東南アジア諸国の実情を理解できていない証拠である。

支持率低迷のバイデンは焦っている

 同盟国の結束を高めるサミットを急遽開催したバイデンの焦りも見える。

 現在のバイデン政権は窮地に陥っている。今年6月に副大統領のハリスがメキシコ移民は来るなと発言した事や、8月のアフガン撤退の不手際に加えて、インフレで生活苦に陥っている国民の不満が募っている。岸田首相就任後に対面での日米首脳会談の日程が決まらないのも、バイデンがアメリカ国内の対応で忙しくそこまで手が回らないのが理由だ。

 バイデン政権としては、不満打開の為に先月には国内石油備蓄放出を、そして中国に対する国民の不満打開の為に今回のサミットを開催した。来年に中間選挙を控えるバイデンとしては、先月に民主党の地盤であるバージニア知事選で共和党候補がまさかの勝利をした事もあり、支持率回復に焦っている状況だ。(関連記事:【原油高騰】原油価格高騰を終わらせるのは「あの国」?【元大学教員の時事解説】

 中国に対する不満はコロナ前から高まっていた(ファーウェイによる通信傍受疑惑)が、アメリカでは中国依存の製造業がコロナ禍において見直され始めている。それは、新疆ウイグル自治区で中国政府が奴隷のように労働者を使い、人権侵害をしているとアメリカが非難を続けるのも理由にある。9日には、行方不明だった中国人テニス選手とバッハ会長がテレビ電話した経緯が不透明だという理由で、下院で全会一致でIOCに対する批判の決議が可決されたが、民主党と共和党が中国に対する態度を一致させた事が異例である。

 脱炭素政策を推進するバイデン政権で増えているアメリカのソーラーパネルは、中国製の方がコストが安く顧客からも人気があるが、これは今米国内で生産できるようにしている。また、日本人が大好きなiPhoneは中国に生産ラインがあるのだが、半導体供給網は半導体の供給を中国依存から脱却し、半導体生産トップのシェアを誇る台湾へ移行しようとしている。

 5GやAIといった次世代のハイテク産業で台湾と連携強化したいという思惑も、民主主義サミットにある。

トランプと同じ事をしたくないバイデンの弱腰外交が見える

 だが、中国に圧力をかけるとは言え、バイデンの場合中国に配慮する狙いも見える。北京五輪外交的ボイコット検討は米中首脳会談後に始めたし、民主主義サミット開催は米ロ首脳会談を終えた段階で開催した。選手の参加は認める外交的ボイコットに対して与野党の議員から「不十分だ」という声も上がっているが、バイデンとしては中国と全面衝突を望んでいる訳ではなく、協力できる面では協力したいという考え方だ。

 中道的な立場にあるバイデンは、中国への圧力をかけるという政策はトランプと似ている部分があるが、トランプと同じ強行的な事(例えば「チャイナ・ウイルス」というワードを使ったり、中国に対し法外な関税をかける事など)をやると変化を求めてバイデンに投票した有権者から不満が高まる為、トランプと同じ事は絶対にできないというジレンマもある。今回のサミットでは技術面でも同盟国の協力を得るという思惑もあり、単独主義を掲げたトランプ政権では考えられないサミット開催と言える。

 これはエネルギー政策においても違いが見られ、例えばトランプの場合はパリ協定から離脱するなど脱炭素政策よりも経済を優先させて中国を追い抜こうと考えていた。だが、バイデンは脱炭素政策をリードすることで同じ政策を掲げている中国を追い抜こうと考えている。

バイデンのナルシストな性格が顕著に出た形となった民主主義サミット

 筆者は今年初めにバイデンが就任してから一貫して彼の無能さを叩き続けてきた。就任当初はトランプの代わりとして期待値が高かったようだが、ようやく8月になって、アフガン撤退の不手際からアメリカの人たちやメディアも彼の無能さを理解し始めたようである。

 筆者は1月に「バイデンは小池百合子に似ている」とインタビューで発言した事がある。バイデンはナルシストで短気な性格であり、小池百合子と似ている部分がある。

 例えば、バイデンは昨年の大統領選で記者とケンカになり、「お前とIQテストをやってみようか」と挑発する暴言を吐いた。小池も2017年の衆院選で合流しようとしてきた民進党を「排除します」と発言し、結果大敗となった。また、大学の成績疑惑も共通しており、バイデンは過去に成績を詐称していた事を記者に問いただされ「お前よりも俺の方がIQが高いんだぞ」と、ビリで卒業したくせに偉そうに言い放った。小池もカイロ大学を首席で卒業したと自著に書いたが、成績が良いなら成績表を開示できるはずなのに開示できず、首席で卒業したかどうかは不明である。他にも類似点があるが、1月のインタビューで説明したのでここでは書かない。

 バイデンと小池は、どちらも「自分が一番偉い」と考えているナルシストな性格で、頭に来ると不用意な失言をしてしまう短気な性格だ。(参照:【新年短観】日本のメディアが報道しないバイデンの本性とは。バイデン当選予想を的中させた米滞在歴の院試合格者が解説

 今回のサミットはそのナルシストな性格が顕著に出たものであると言える。招待する、しないで国を区別し、アメリカに忠誠を誓う国とそうでない国を区別した。アメリカに懐疑的な国には武力は使用しないものの、その代わり同調圧力をかけてアメリカの民主主義を刷り込みさせる。如何にもナルシストなバイデンらしいやり方である。

 だが、このやり方だと招待されなかった国が一気に中国に寄る可能性もある。中国は発展途上国を支援している為、アメリカに見限られたと判断すれば中国に寄るだろう。そうなればサミットはアメリカの戦略的意図とは逆効果となってしまう。

民主主義を盾に結束を高めるサミットは無意味である

 トランプは再選されていれば「強大なアメリカ」をバックに法外な関税をかけるなどして単独で中国に圧力かけるつもりだったが、バイデンは民主主義サミットで同盟国に「中国がウザいから一緒に圧力をかけて欲しい」と協力をお願いして圧力をかけようと考えている。

 そう聞くとなんだか、圧力のかけ方としてはトランプの対中政策よりも弱い気がしないだろうか。招待国の中にはアメリカに懐疑的な国も含まれており、「わざわざ会合開くことなの?」と疑問に思っている国もあるだろう。第一、議会の話し合いで政治が決定される民主主義は政策決定のプロセスに時間がかかる為(しかも選挙で国のトップが交代する可能性もある)、独裁者が単独で政治を決定できる専制主義よりもスピード面で劣るので、軍事力で協力するのではなく民主主義を盾に結束するという事は意味が無いという事にバイデンは気付いていない。技術提携を結びたいだけならアメリカと台湾が勝手に結べば良い話な訳で、100国も招待してするような話でもない。

 アメリカ国内でも1月に議会襲撃事件が起こり、しかも9月にアフガンで13人もの死者を出した誤爆事件を起こしたせいでアメリカの防衛力に対する不信感が台湾で高まる中、アメリカ以外も国内外で民主主義における連携が希薄化している状態で民主主義を盾に結束を高められるかは未知数だと筆者は考える。

※誤字を訂正しました(12/29)

(HIROKI)